最終更新日2021/9/26

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Home | 今月の主張 | お問合せ | 購読申込

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 


危機で試される リーダーの資質

 

藤田 正美 (ジャーナリスト)

ご意見・ご要望はお気軽にこちらまで

 


 9月9日に行われた菅義偉首相の記者会見は、まるで辞任会見のようだった。この一年間のことを振り返り、難しかったがそれなりに成果を挙げたとして、聞きようによっては「自画自賛」ともとれる会見だった。

 たしかに、新型コロナ対策は誰がリーダーだったとしても、難しい課題である。敵の正体はよくわからないし、ワクチンもない、薬もないという状態だった。医療体制の構築といっても、どこからか医師や看護師などの医療従事者が急に現れるわけでもない。縮小が続いてきた保健所の体制強化といっても、そう簡単に専門的な人材を調達できるわけでもない。

 しかも諸外国でやった都市封鎖のように強制的な「私権制限」もできず、個人に対しても、飲食店に対しても、頼みの綱は「要請」しかない。言い換えれば徒手空拳でウイルスに立ち向かうような話だ。

 しかし、コロナ禍は誰が見ても「国家の危機」である。今ごろになって「災害級」とか言っているが、2020年の春の時点で、京都大学(当時は北海道大学)の西浦博教授は「何もしなければ42万人の死者が出る」と警告していた。現在のコロナによる死者数は1万7000人ほどで、その警告に比べれば圧倒的に少ない。それでも政治家が、その警告を軽く見ていたことは間違いあるまい。

 危機であれば、政治家は法律で定められた境界線を踏み越えてでも、自らの権力をかけて国民の生命と財産を守らなければなるまい。たとえば、医師や看護師の調達、ワクチンや薬の承認手続きの短縮、要請に従わない飲食店に対するアメとムチ。たとえ後から訴えられたとしても、いたずらに手をこまねいているよりはよかったはずだ。

 その意味で菅首相は、いかに日本が危機的な状況であるかを国民に訴えることに失敗している。西浦教授が「政治家には覚悟のかけらもなかった」と言ったのは、そのことを指していると思う。覚悟がないことで、あらゆることが後手後手に回ってしまった。今ごろになって「野戦病院」とか言っているのがその証左である。

 ワクチンにしても諸外国よりも接種のスピードが速いことを「自慢」するより、なぜ調達が諸外国に比べて遅かったのかを考えてみるがいい。世界で最も早く接種が進んだのはイスラエルだった。イスラエルと言えば、三方を「敵」に囲まれた国だ。その意味では、いつも危機的な状況に置かれている。国家の存続を守るためには、大げさに言えば何でもする国だ。それがワクチンの調達にも表れた。

 それに比べると、日本は甘いと思う。こんな調子で、もっと大きな危機に陥ったとき、日本の政治リーダーは、国民を説得し、国を守ることができるのか、甚だ心許ない。

(元ニューズウィーク日本版編集長)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

新・電活生活キャンペーン

 

電気料金シミュレーション

 

月刊「カレント」購読問合せ先は、潮流社です。
電話 03−3479−4260
FAX
 03−3479−4236

 

 

 

Home | 今月の主張 | お問合せ | 購読申込

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カレント」は賀屋興宣(元蔵相・衆議院議員)が昭和39年、左右に偏することなくアメリカ合衆国を盟友として、自由主義社会であるわが国に、正しい世論を喚起することを目的に創刊。政治・経済・防衛・外交・教育を正しく導く論を広く求め、かつ訴えつづけている。カレントの意味は[潮流」。昭和61年には木内信胤(元世界経済調査会理事長)が継承。その間、福田赳夫元総理が維持会世話人代表をされ、根岸龍介が社長として行ってきたが、厳しい環境もあり77才を期に退任する。平成10年6月、潮流社がこの精神を受け継ぎ、日本再生のための潮流を起こす言論活動を開始。次世代のためにも日本を再創造することを広く呼び掛けている。