最終更新日2019/6/25

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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老後2000万円問題 論議をしない政治は先が見えない

 

藤田 正美 (ジャーナリスト)

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 金融庁が作成した『高齢社会における資産形成・管理』と題する報告書が、誤解と曲解に翻弄されて葬り去られようとしている。麻生金融担当大臣は、「国民に不安を与える報告書は受け取らない」と異例の発言をした。

 そもそも年金だけでは老後の生活を賄えないというのはほぼ先進国の常識だ。ダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)は6月13日に『年金不足400兆ドルのことを考えよう』と題する報告書を発表した。これによると、2015年の時点で、引退したときに保有している資産と、老後を過ごすのに必要な資産との差がオーストラリア、カナダ、中国、インド、日本、オランダ、イギリス、アメリカの8カ国合計で70兆ドル(約7700兆円)に達しているという。さらにこのまま何も手を打たなければ2050年にはその差額が400兆ドル(約4京4000兆円)に達するという。日本のGDPが500兆円台半ばであることを考えれば、この金額の巨大さが分かるだろう。

 年金が不足するのは構造的な理由だ。寿命が伸び、高齢者が増加しているからである。日本で国民皆年金制度がスタートしたのは1961年だが、このころの平均余命は男性で65歳、女性で70歳ぐらいだ。それが今では男性で81歳、女性で87歳を越えている。これだけ長く生きるようになれば、年金の支給額が増え、年金財政が破綻に近づくのは火を見るより明らかだ。その意味では、何とか長く働いて、年金をもらうのを先延ばししてもらいたいと考えるのも当然だ。

 だからこそ金融庁のリポートでも、一人でも多くの人が若いときから資産形成に力を入れてもらいたいし、そのためには金融サービスの強化をしなければならないと指摘している。ごく当たり前の話である。

 それなのに2000万円の「不足」という数字だけを一人歩きさせたのはメディアの責任だ。あたかも年金制度そのものが崩壊するかのように報道し、「100年安心」をうたってきた政策の失敗を追及した。それに輪をかけてひどい対応をしたのが与野党の政治家である。7月に参院選を控え、かつての「消えた年金問題」の再来を恐れたのか、この問題に蓋をしてしまおうと躍起になった。野党は野党で、「安心安心詐欺」などと将来ビジョンそっちのけ、安倍政権を追及することしか頭にないように見える。

 今こそ、これからの人口減少社会、高齢化社会を前提に、年金や介護、医療、そして財政をどうするのか議論すべきところなのに、与野党ともそういった姿勢が見えない。理由ははっきりしている。この問題を下手に議論すると、老人票を失うことが明らかであるからだ。本来、支持率の高い政権のときにこういった痛みを伴う改革を実行しなければならない。それができる時代はいったいいつ来るのだろうか。

(元ニューズウィーク日本版編集長)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

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「カレント」は賀屋興宣(元蔵相・衆議院議員)が昭和39年、左右に偏することなくアメリカ合衆国を盟友として、自由主義社会であるわが国に、正しい世論を喚起することを目的に創刊。政治・経済・防衛・外交・教育を正しく導く論を広く求め、かつ訴えつづけている。カレントの意味は[潮流」。昭和61年には木内信胤(元世界経済調査会理事長)が継承。その間、福田赳夫元総理が維持会世話人代表をされ、根岸龍介が社長として行ってきたが、厳しい環境もあり77才を期に退任する。平成10年6月、潮流社がこの精神を受け継ぎ、日本再生のための潮流を起こす言論活動を開始。次世代のためにも日本を再創造することを広く呼び掛けている。