最終更新日2020/3/25

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新型コロナウイルス 政府にシナリオはあったか

 

藤田 正美 (ジャーナリスト)

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 新型コロナウイルスが世界で猛威をふるっている。中国の新たな感染者数は収まりつつあるように見えるが、欧州ではイタリアを始めとして感染者が急増している。イタリアは市民の移動を制限するほど蔓延しているが、他にもフランス、スペイン、ドイツでも感染者が1000人を超えた。

 現段階で日本政府の対応がよかったのか悪かったのかを判断するのは難しい。まだウイルスの実体もよく分からないところがあるし、薬もなく対症療法しかできないような状況だからだ。何かと政府に対して批判的なメディアは、自分たちもよく分からないなかで、政府は何か隠しているのではないかと専門家の見解すら疑ったりしているが、あまり根拠はない。

 ただそれでも、政府対応で気になることがある。それは「危機管理」である。危機管理とは、危機が起こったときにその被害をどうやって最小化するかということだ。当然のことながらすべての危機を予想できるわけでも、管理できるわけでもない。かつて原発の安全性が議論されたとき、「もし隕石が原発に落ちたときでも安全か」という議論をした人がいた。もちろん原発は隕石に耐えるようにはできていないし、そもそも隕石が日本を直撃すれば、その大きさによってはそれ自体で壊滅的な被害をもたらすことになる。それに隕石が直撃する確率はそれこそ「天文学的に」小さい。

 ただこの確率論には落とし穴もある。たとえば東京電力の福島第一原発だ。なぜ高さ15メートルの津波に襲われることを想定しなかったのか。歴史的には貞観津波などをはじめ、何度も大きな地震・津波に襲われている。しかし東電は、防潮堤の高さを積み上げ、予備電源を高台に設置するなどの改修を行わなかった。それは要するに「確率が高くない」と考えたからだ。

 福島第一原発で原子炉冷却のために使う電源についても、いわゆる外部から来る電源を喪失することは「ありえない」とされた。しかし2001年3月11日には、鉄塔の倒壊によって外部からの電源を喪失、結果的に原子炉のメルトダウンが発生した。原発の安全神話を保とうとするあまり、確率の小さいことを無視した結果、世界最悪の原発事故が起こったのである。

 本来、シナリオを描くときは確率の大小にこだわらないほうがいいのと思う。なぜなら確率を考えた途端に「それは起こりえない」という考えに転化するからだ。そうなったら備えがあるかどうか議論することすらない。今回のケースで言えば、日本に未知のウイルスが侵入してきたときに、どう対処するのかについて、厚労省がシナリオとしてどこまで考えていたのだろうか。大型クルーズ船の有事の検疫などおそらく想定外だったはずだ。そういったことをどこまで想定しておくかで、危機を管理できるかどうかが決まる。

(元ニューズウィーク日本版編集長)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

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「カレント」は賀屋興宣(元蔵相・衆議院議員)が昭和39年、左右に偏することなくアメリカ合衆国を盟友として、自由主義社会であるわが国に、正しい世論を喚起することを目的に創刊。政治・経済・防衛・外交・教育を正しく導く論を広く求め、かつ訴えつづけている。カレントの意味は[潮流」。昭和61年には木内信胤(元世界経済調査会理事長)が継承。その間、福田赳夫元総理が維持会世話人代表をされ、根岸龍介が社長として行ってきたが、厳しい環境もあり77才を期に退任する。平成10年6月、潮流社がこの精神を受け継ぎ、日本再生のための潮流を起こす言論活動を開始。次世代のためにも日本を再創造することを広く呼び掛けている。