最終更新日2021/8/25

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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政治リーダーの基本は 国民と危機感を共有することだ

 

藤田 正美 (ジャーナリスト)

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 8月初、政府はコロナ患者の入院方針を変更することを明らかにした。重症者用のベッドを確保するために、重症者や重症化リスクの高い患者だけを入院させ、後は自宅療養にするのだという。唐突とも言える方針転換に与党内からも反発する声が上がったことを受け、やや軌道修正を図ったが、自宅療養を基本とする方針に変わりはない。

 医療がパンクしつつあるときに、重症者やそのリスクが高い人を優先するのは理解できる。しかし医療が危機に瀕しているという「警告」はなく、いきなりの方針転換であったために、国民の間で不安や不満が生まれた。

 明らかにコミュニケーション不足だし、オリンピックの期間中になるべく悪い情報は言いたくなかったのかもしれない。だから「重症者のベッドを確保するために」という話ばかりが強調され、中等症の感染者はどうするのかの説明も最初は省かれてしまった。そのため、中等症の感染者を中心に、自宅療養という名の下に「見捨てられる」という不安が生まれた。実際、ある病院では、救急搬送されたコロナ陽性者が、帰宅するよう促されても救急救命室に居座るということが発生しているという。

 まるで「退却」を「転進」と言い換えた旧日本軍の大本営発表のようだ。実態を国民に説明し、危機感を高めていかねばならないときにしなかった。これは菅政権が発足して以来、ずっと続いていることでもある。昨年末の第3波のときも、菅総理はGo Toキャンペーンが患者の増加をもたらした証拠はないと語った。人流が増加すれば感染者が増えると専門家が言い続けてきたのに、政府に都合のいい数字で言い抜けようとしたとしか見えない。

 政治的リーダーの役割は、国民に正確な情報を提供し、政府の危機感を国民と共有することだと思う。都合のいい情報だけを伝えれば、ますます実態と乖離する。どうにもならなくなったときに、国民はある日突然に事実を突きつけられることになる。菅政権の支持率が就任以来、最低となり、危険ラインとされる30%前後に落ち込んだのも無理はないし、まだ下がることになるだろう。

 感染症対策の原則は、まずは患者の隔離だ。自宅療養は緊急避難でしかない。軽症から中等症に悪化するのを防ぐ抗体カクテルも点滴であるために、自宅で使うのは難しい。それに、家族を感染の危機にさらすことにもなる。一人暮らしだったりすれば、急変したときの救援要請も難しいだろう。それは大阪で経験したことでもある。それでも自宅療養を基本としなければならないほど、医療が逼迫しているというのは事実だ。そうであれば菅総理はその事実を国民にていねいに説明し、国民の理解と協力を仰がねばならない。どんなに自分の立場が危うくとも、それが政治リーダーの責務である。

(元ニューズウィーク日本版編集長)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

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「カレント」は賀屋興宣(元蔵相・衆議院議員)が昭和39年、左右に偏することなくアメリカ合衆国を盟友として、自由主義社会であるわが国に、正しい世論を喚起することを目的に創刊。政治・経済・防衛・外交・教育を正しく導く論を広く求め、かつ訴えつづけている。カレントの意味は[潮流」。昭和61年には木内信胤(元世界経済調査会理事長)が継承。その間、福田赳夫元総理が維持会世話人代表をされ、根岸龍介が社長として行ってきたが、厳しい環境もあり77才を期に退任する。平成10年6月、潮流社がこの精神を受け継ぎ、日本再生のための潮流を起こす言論活動を開始。次世代のためにも日本を再創造することを広く呼び掛けている。